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税理士事務所は、一般的には2〜5月が一番の繁忙期と言われています。
実際は、クライアントが個人事業主が多いのか、法人が多いのかによって大きく変わります。
さらに、法人の決算期や企業規模などによっても税務の取り扱いが異なるため、多くのクライアントを抱える税理士事務所の規模は、1年中業務に追われていることもあります。
本記事では税理士の繁忙期の実態について詳しく解説します。
税理士業界全体の繁忙期
税理士の繁忙期は11月から5月です。
税理士の業務はクライアントとなる企業が個人事業主の会計や税務を手助けすることです。
そのため、業務の量も税務署に書類を提出する確定申告や決算月に影響されやすいです。
個人事業主がクライアントの場合、2月16日から3月15日の間に確定申告書を作成し、期日までに税務署に提出する必要があります。
個人事業主の中には不動産や株式などの投資を行っている法人の経営者も多く、扱う業務の数も非常に多いことから1年の中でも多忙な時期と言われています。
法人がクライアントの場合、決算月の末日から2ヶ月以内に確定申告書を作成し、税務署に提出する必要があります。
法人の決算月は一般的に2月と9月が多いため、末日から2ヶ月後になる11月と5月に業務が集中します。
また、担当する法人の決算月が重なっている場合は、その2ヶ月後に業務が立て込むことがあります。
クライアントの中には、年末調整を税理士に任せる事業者も多いです。
法人の年末調整は12月に行う必要があるため、法人のクライアントを多く扱う税理士事務所は12月と1月に業務が集中します。
年末調整業務としては、1月に2種類の書類の作成が必要です。
1つ目は法定調書です。
賃貸物件の家賃や給料の支払額や源泉徴収額を税務署に報告する書類です。
2つ目の償却資産税です。
所有する動産の固定資産に関する明細書を作成し提出しなければいけません。
これらの書類はそれぞれ1月末までに市区町村や税務署に提出する必要があるため、2つの書類作成の業務が集中する1月は忙しくなります。
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税理士事務所のスケジュール
税理士事務所の年間スケジュールは以下のとおりです。
法人に関する年間スケジュールについては、3月決算法人を想定して作成しています。
1月 | 年末調整・源泉所得税(納期特例)の計算・法定調書の提出・償却資産税の申告 |
2月 | 所得税の確定申告・贈与税の確定申告 |
3月 | 所得税の確定申告・消費税の確定申告(個人)・贈与税の確定申告 |
4月 | |
5月 | 法人税の確定申告・消費税の確定申告(法人) |
6月 | |
7月 | 源泉所得税(納期特例)の計算・所得税の予定納税(1期) |
8月 | |
9月 | 法人税の中間納付・消費税の中間納税(法人) |
10月 | |
11月 | 所得税の予定納税(2期) |
12月 | 年末調整 |
住民税や固定資産税、自動車税が税理士事務所の年間スケジュールに組み込まれていない理由は、賦課課税方式といって、各市区町村等が納税者に対して納めるべき税金を計算するためです。
また、上記のスケジュールでは、3月決算法人のみのスケジュールを想定していますが、法人の決算期は自由に設定できることから、クライアントに法人が多い税理士事務所は、繁忙期が変わります。
働き方で変わる税理士の繁忙期
税理士は事務所やクライアントの規模によって繁忙期が異なります。
本章では税理士のはたき方という側面から繁忙期について解説していきます。
小規模税理士事務所
小規模事務所は税理士を含めて5名前後のスタッフで運営されます。
クライアントは中小企業が多く、巡回監査ではチェック業務以外にも、通帳や領収書のデータを入力する記帳代行を行っている場合も多いです。
スタッフは経理担当者がいない場合も多く、繁忙期の2〜3月はもちろん、クライアントの決算月が重なっている時期はとくに忙しいです。
中堅税理士法人
中堅税理士法人は15〜40名以下のスタッフで運営されます。
クライアントも中堅企業が多く、上場を目指すベンチャーなども多いです。
業務はクライアントの税務を総合的に扱うことが多く、書類作成だけでなく税金や財務のアドバイザー的な役割も担います。
クライアントの規模が大きくなるため、書類の作成にかかる時間も多く、繁忙期はもちろん通常の業務でもスタッフへの負担も大きいです。
大手税理士法人
大手税理士法人は100名以上のスタッフで運営されています。
クライアントは海外との取引を行う大企業が多く、上層部だけでなくスタッフも非常に高い知識を求められます。
大手事務所の業務は1人のスタッフが1つのクライアントを担当することが少ないです。
そのため、扱う税務に合わせて専用の部署が用意されており、1つのクライアントに対して複数の部署で対応することがほとんどです。
しかし、クライアントが扱う取引金額が大きいため、事務所側のミスによって数億円規模の税金がかかってしまうこともあります。
そのため、繁忙期以外の時期でも高度な取引に対応するための知識をつけるための勉強が必要で、労働時間も長くなりがちです。
関連記事:税理士法人とは?監査法人・会計事務所・税理士事務所と何が違うの?
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繁忙期の働く時間はどれくらい?
繁忙期の税理士事務所は月に数十時間以上の残業が必要です。
繁忙期以外は決められた労働時間内に出所、退所できる場合がほとんどです。
しかし、繁忙期になると、業務量が倍増するため、残業はもちろん休日出勤が必要な事務所もあります。
1年を通してプライベートの時間をしっかりと確保したい人や、家事や育児のために充分な時間を確保したい人にとっては、繁忙期は非常に辛い時期を過ごすことになるため注意が必要です。
また、企業の時間外労働は労働基準によって規制があり、指定された労働時間を超えた場合の給料は通常の25%増の割増賃金を支払う必要があります。
税理士事務所が働く従業員に対して時間外労働を求める場合は、双方で協議を行い、合意の元で36協定を結ぶのが一般的です。
36協定は時間外労働に関する規定を定めた法律で、原則として1ヶ月に45時間、1週間に15時間を超える残業はできないというものです。
しかし、時間外労働が必要な特別な事情がある場合は、月45時間を超えた際に、25%以上の割増賃金(努力義務)を支払うことを条件に、上限を60時間にできます。
税理士事務所の繁忙期は、通常の業務に比べて短期的に時間外労働が増えるため、36協定における特別な事情になります。
税理士の閑散期はいつ?その過ごし方と有効活用法
税理士業界には、確定申告や決算申告といった大きな山場がある一方で、比較的業務量が落ち着く「閑散期」も存在します。
一般的には、6月頃から11月頃が閑散期にあたると言われており、これは、主要な税務申告期限が集中する時期を過ぎた後や、次の大きな期限が到来するまでの間隔に位置するためです。
ただし、閑散期とはいえ業務が完全に停止するわけではありません。この時期は、税理士にとって以下のような重要な活動に充てられることが多いです。
閑散期をどのように過ごすかは、税理士個人のキャリア志向や、所属する事務所の文化によって大きく異なります。
この期間を有効活用することで、税理士としての専門性を高め、長期的なキャリア形成に繋げることが可能です。
税理士の仕事内容は?独占業務やメリット、難易度をわかりやすく解説
以下に閑散期の活動例を紹介します。
専門知識の習得・スキルアップ
繁忙期にはなかなか時間を取れない税法改正の勉強会への参加、新たな資格取得に向けた学習、専門分野の深化など、自己投資の期間として活用されます。
常に変化する税法に対応し、専門性を高めるためには、この時期の継続的な学習が不可欠です。
クライアントとの関係構築・コンサルティング業務
繁忙期には手が回りにくい、顧問先への巡回監査の徹底、経営相談、節税対策の提案、事業承継支援など、より踏み込んだコンサルティング業務に時間を割くことができます。
これにより、クライアントとの信頼関係を深め、付加価値の高いサービス提供に繋げます。
事務所内の業務改善・効率化
繁忙期に浮き彫りになった課題(例: 業務フローの見直し、ITツールの導入検討、スタッフ教育など)への対応や、マニュアル整備、情報共有体制の強化など、事務所全体の生産性向上に向けた取り組みが行われます。
これにより、次なる繁忙期に向けた準備を進め、業務の効率化を図ります。
休暇の取得・リフレッシュ
長期休暇を取得し、心身のリフレッシュを図る税理士も多くいます。繁忙期の労働負荷が高い分、この時期に計画的に休暇を取れるかどうかが、ワークライフバランスを維持する上で重要になります。
転職活動・キャリアプランの検討
繁忙期には情報収集や面接の調整が難しい転職活動も、閑散期であれば落ち着いて取り組むことができます。
将来のキャリアパスを見つめ直し、新たな挑戦を検討する絶好の機会とも言えます。
まとめ
税理士は事務所の規模に関わらず繁忙期に時間外労働が増えます。
税理士の繁忙期はクライアントの確定申告時期となる2〜3月と、法人の決算月となることが多い2月・5月・9月です。
また、事務所の規模によっても扱う業務が異なるため、小規模事務所と大手事務所では通常の残業時間も大きく異なります。
税理士事務所への転職を考える際は、繁忙期による時間外労働を前提と考えてから転職を検討しましょう。
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