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会計事務所(税理士法人)は、公認会計士のキャリアパスにおける、ひとつの選択肢です。
近年は、記帳代行など単純な業務が減少する傾向です。
その代わりにM&A・組織再編などのコンサルティング業務といった、専門知識を活かし、人とのコミュニケーションが必要な高度な業務が会計事務所でも扱われるようになりました。
AIの進化に伴い、会計事務所の業務の幅が拡大していると言えるでしょう。
そのため、様々な経験を積んだ公認会計士のニーズが高まっています。
中でも大手会計事務所への転職は人気です。
今回は会計事務所の転職について、メリットやデメリットなどを詳しく解説します。
会計事務所とは?
会計事務所とは、税理士や公認会計士の資格を持つ者が、税務や会計の専門知識を活用して運営する事務所のことです。
法人や個人事業主のクライアントに対し、日々の取引に関わる税務申告や会計処理を代行するサービスを提供します。
税理士の独占業務のイメージが強いかもしれません。
それだけでなく、必要に応じて経営コンサルティングなども行い、社会的に重要な役割を担っています。
会計事務所とは、クライアントの企業規模によってそれぞれ行うことが異なります。
またそれぞれの得意分野・強みを持っていることが多いです。
関連リンク:会計事務所とは?基礎知識や業務内容について
会計事務所の種類
主な会計事務所は、個人事務所・税理士法人・アウトソーシング会社の3種類であり、組織形態が異なります。
個人事務所は、税理士や公認会計士が個人事業主として独立・開業した会計事務所で、中小企業にサービスを提供しています。
税理士法人は、税理士2名以上が法人として設立する形態であり、一般的に個人事務所より規模が大きく、より専門的内容を取り扱っているのが特徴です。
税理士法人の場合には、規模の大きさから支店を設置できたり、退職金の支払いや社会保険に加入できるメリットもあります。
アウトソーシング会社は、クライアントから経理業務を受託して、経理業務を代行する会社です。
各会計事務所の組織形態の違いから、専門的なサービスを展開しており、社会的なニーズがあります。
会計事務所と税理士事務所に違いはない
税理士事務所と会計事務所は、名前が異なるだけであり同一の存在なので、組織形態や業務内容による違いはありません。
税理士事務所は、税理士が運営している事務所であり、税務が主な業務ですが付随して必要となる会計業務や、会計や税務の視点から経営コンサルティングなども行っています。
業務が税務だけではないので、総合的に会計に関するサービスを提供しているという意味で、会計事務所という名前で活動する場合もあるのです。
関連リンク:税理士事務所の仕事内容について徹底解説
会計事務所と監査法人の違い
会計事務所は公認会計士や税理士が在籍し、主に税務サポート(税務申告、節税対策)の業務が中心です。
個人事務所・税理士法人・アウトソーシング会社の大きく分けて3種類あり、どれも組織形態や、中心となる業務は異なります。
監査法人は、企業の財務諸表が適正かチェックする監査を専門とする法人です。
主に公認会計士が所属します。
会計事務所は税務の専門家、監査法人は会計・監査の専門家としての道を進むことが多く、キャリアの道筋が大きく異なります。
また、一般的に監査法人の方が大規模企業の監査に関わるため、平均年収が高い傾向があります。
仕事・業務内容の違い
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会計事務所の仕事・業務内容 |
監査法人の仕事・業務内容 |
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・税務申告の代行 ・記帳業務 ・巡回監査 など |
・監査業務 ・コンサル業務 など |
会計事務所の主要なサービスは、税務申告の代行や記帳業務、巡回監査といった、税務に関連して発生する業務が中心です。
一方、監査法人が主として担うのは法定監査です。
会社法や金融商品取引法などの法律に基づき、大手企業には義務付けられています。
公認会計士が企業の計算書類や財務諸表、内部統制報告書が適正に作成されているかを調べ、専門家としての意見を表明する業務です。
両者ともに、専門的な知見を活用する独占業務を行うことも特徴です。
しかし、その内容は大きく異なることに留意しましょう。
M&Aや企業再編のサポートといったアドバイザリー業務も提供する会計事務所・監査法人もあります。
年収の違い
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会計事務所の年収例 |
監査法人の年収例 |
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・未経験の場合、300万円程度からスタート ・スキル等により徐々に年収アップが可能 |
・500万円程度からスタート ・昇進・昇格に伴い年収アップが可能 |
会計事務所の年収は、未経験で300万円程度からスタートし、担当を持ち記帳代行や巡回監査をスムーズに行えるようになると徐々に収入は上がっていきます。
資格手当や新規顧客獲得など、実績が給与に反映される機会が多いため、努力次第で年収額を増やしていくことも可能です。
監査法人は、上場企業などの大会社を相手にした高度な会計知識を必要とするため、初任給は500万円程度と高く設定されています。
数年で600~700万円になる場合も多く、昇進・昇格(スタッフ、シニア、マネージャーなど)に伴い給与も増えていきます。
特に、大手監査法人は中小会計事務所と比較して昇給のスピードが速く、平均年収も高水準にあるのが特徴です。
その代わり、ハードだと言われることも多いです。
近年はワークライフバランスの改善も進みつつあります。
キャリアの違い
一般的な会計事務所では、監査法人のような明確な職務階級制度がないことが多いです。
キャリアは、主に以下の要素によって形成され、昇給・昇格していきます。
経験とスキルレベル: 税務申告、記帳代行、巡回監査などの実務経験や、顧客への提案能力が評価されます。
取得資格: 税理士資格(科目合格含む)や公認会計士資格の有無が、任される業務の幅や役職に直結します。
専門性: 資産税、事業承継、国際税務など、特定の分野の専門性を高めることで、付加価値の高い業務を担当できるようになります。
最終的には、独立開業や、所内のトップ(所長代理、パートナーなど)を目指すことが主なキャリアの道筋です。
一方、監査法人には、明確な職務階級(タイトル)制度が存在するのが大きな特徴です。
階級は、経験年数や実績に応じて順に上がっていき、任される権限と責任が増大します。
- 基礎的な業務を担うスタッフ
- 現場の主任として働くシニアスタッフ
- 複数の監査チームを管理するマネージャー
- 監査業務全般の管理・責任、法人経営への参画をするシニアマネージャー
法人による監査契約の責任者となるパートナー
まで段階があります。
監査法人で培った高度な会計・監査スキルを活かし転職するケースも一般的です。
年数や階級によりますが、事業会社のCFO(最高財務責任者)やコンサルティングファームのコンサルタントなどに転職する人が多くいます。
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会計事務所における公認会計士の業務の流れ
会計事務所における公認会計士の業務は、年間を通してクライアントの状況に応じた支援を行うことが中心となります。
税理士資格を持っていない場合、独占業務は行えません。
まず、 通常の業務の流れを見ていきましょう。
- 依頼相談 :法人や個人事業主に対して、どのような会計・税務上の支援を行うのか、ヒアリングを通じてサポート内容を決定します。
- 会計業務:クライアントに代わって帳簿を作成する記帳代行や、記帳内容の確認と経営アドバイスを行う巡回監査を実行します。
記帳代行から一歩進み、クライアントが自社で会計処理を行えるよう支援し(自計化と呼びます)、その後に巡回監査に移行する場合もあります。 - 給与計算:社会保険や税金に関する専門知識が必要となるため、税務サービスと合わせて給与計算を請け負う場合も多いです。
- 税務申告:個人の場合には所得税、法人の場合には法人税、また状況に応じて消費税を、適切に申告しなければなりません。
それぞれの申告書を作成し申告します。
こうした申告業務は、会計事務所の収益の柱です。
さらに、季節的に生じる業務があります。
法律や企業の会計期間によって時期が固定されている季節的な繁忙業務があります。
これは、会計事務所の業務のひとつの特徴です。
特に、3月と12月は繁忙期と呼ばれます。
- 3月…… 個人の所得税、消費税、贈与税の確定申告の提出期限がある。
そのため、最も業務が集中する時期の一つ。 - 12月……従業員を抱える企業の年末調整業務が発生します。
また、日本企業では会計期間末日を12月としている会社が多く、決算業務が重なりがちです。3月と並んで1年で最も忙しい時期となります。
大手会計事務所(税理士事務所)へ転職するメリット
公認会計士が会計事務所で働く時、会計事務所の規模や得意分野によって、担当できる業務が異なります。
スキルの幅を広げたい方には、大手会計事務所への転職がおすすめです。
大手会計事務所で働くメリットを3つ解説します。
幅広い業務ができる
大手会計事務所(税理士法人)へ転職する最大のメリットは、中小規模の事務所に比べて業務の幅が広いことです。
監査法人出身の公認会計士が自身の専門知識を活かしやすいと言えます。
一般的な会計事務所の業務内容は、主に「税務会計」が中心です。
記帳代行、税務申告、巡回監査が主となります。
これらの業務は税務スキルが必要です。
監査法人から会計事務所に転職した場合、監査とは勝手が違って戸惑う場面もあるかもしれません。
クライアントの規模が大きい大手会計事務所では、基本的な税務業務に加え、公認会計士としての知識・経験を活かせる以下のようなコンサルティング業務が頻繁に発生します。
・ M&A・組織再編コンサルティング……企業統合や再編に伴う会計・税務上のサポート
・ 国際税務……移転価格や関税、海外進出支援など、グローバルな税務に対応
・ 事業承継・資金調達・IPO支援:……企業のライフサイクルに応じた経営や財務に関するコンサルティング。
大手会計事務所なら、監査業務で培った高度な会計知識や財務分析の経験を存分に発揮できます。
さらに、事業承継や組織再編など専門分野に特化したサービスを提供している事務所もあるので、公認会計士としての強みを活かしながら、新たに税務のスキルを習得できるでしょう。
税務の経験も積みながら、プラスアルファの専門性を持つプロフェッショナルへのキャリアアップも不可能ではないはずです。
独立開業のための準備ができる
大手会計事務所で働く経験は、将来独立開業を見据えてている公認会計士にとっても有利です。
公認会計士が独立開業した場合、業務は税務が中心になることがほとんどです。そのため、監査だけでなく税務業務も経験しておく必要があります。
また、独立後にクライアントを獲得していくためには人脈が必要です。多くの公認会計士が、いったん会計事務所へ転職して税務の経験を積み、人脈を広げてクライアント確保の目処が立った後に独立開業しています。
近年はクラウド会計ソフトの普及により、記帳代行などの基礎的な税務業務は値崩れの傾向にあります。
税務以外の得意分野や専門性があると、独立後も業務を広げていくことができるでしょう。
大手会計事務所は中小会計事務所よりも業務の幅が広いため、独立後の武器となる得意分野や専門性を身につけやすいのが強みです。
監査法人での経験を活かせる
大手会計事務所の業務は、監査法人での経験を活かすことができます。
監査法人は上場企業などの大企業に対して監査を行っていますが、大手会計事務所も比較的大規模なクライアントが多い傾向にあります。
クライアントの規模感や企業風土が似ているため、転職後も監査法人での経験を活かして、スムーズに業務を開始することができるでしょう。
特に大手が得意とするコンサルティング業務においては、監査で培ったスキルが高く評価されます。
監査業務で磨かれた「財務諸表から経営実態を読み解く分析力」は、そのまま経営者へのアドバイスや課題解決の提案に直結するためです。
公認会計士の求人
公認会計士が大手会計事務所に転職するデメリット
独立を考えている方や、転職先の待遇を重視する方は、大手会計事務所で働く際の注意点も把握しておきましょう。
ここでは、大手会計事務所に転職する3つのデメリットを解説します。
独立開業を考える場合にギャップがある
将来、独立開業を考えている場合、独立後のクライアントは個人や中小企業などが多いでしょう。
一方、大手会計事務所のクライアントは比較的大規模な企業が多いため、大手会計事務所での業務と独立後の業務にギャップが生じる可能性があります。
独立開業を目指している方は、独立後の業務内容を事前に想定し、大手会計事務所では小規模なクライアントを希望したり、独立後の専門分野に関する業務を積極的に行うことが必要です。
監査法人との待遇に違いがある
大手会計事務所の年収は、一般的には監査法人よりも低いことが多いです。
しかし、税務業務のみを行っている中小の会計事務所と比較すると、コンサルティングや国際税務などをメインに行っている大手会計事務所のほうが年収が高い場合が多く、監査法人と同水準のこともあります。
福利厚生に関しても、会計事務所は監査法人と比較して充実しているとはいえないことが多いです。
公認会計士資格の維持のための費用補助の制度は多くの会計事務所にありますが、研修制度はあまり整っておらず、外部の研修を受ける必要があります。
有給を取りづらい可能性がある
有給に関しては、監査法人では閑散期に比較的自由に取ることができますが、会計事務所では担当している業務によっては有給を取得しづらい場合があります。
税務業務のみを担当している場合は、毎年のスケジュールがある程度決まっているため、有給は取りやすいでしょう。
一方、コンサルティング業務を担当している場合、年間スケジュールを予測できないことが多くなります。
また、突発的な業務が発生することも多いため、有給を取りづらい可能性もあるでしょう。
会計事務所への転職に向いている人
監査法人での経験を活かして公認会計士が会計事務所で活躍するには、当人の意思やスキルが重要です。
会計事務所を選ぶための理由や、キャリアプランも持った上で転職活動をすべきです。
最後に、どのような方が会計事務所への転職に向いているのか、具体的な特徴を解説します。
クライアントと深く関わりたい人
監査法人の業務は、主に財務諸表の適正性を確かめる意見表明であり、クライアントの経営に直接関わる機会は限定的です。
一方、会計事務所の公認会計士は、記帳代行や巡回監査を通じて、経営者と継続的に深く関わります。
日常の業績報告や税務相談、経営改善のアドバイスなど、クライアントの成長を間近でサポートしたいという意欲がある方に向いています。
直接感謝を伝えてもらえるというやりがいも感じられるでしょう。
専門領域を広げたい人
会計事務所では、監査法人では経験することの少ない税務のスキルを新たに身につけることができます。
公認会計士は税理士の登録が可能ですので、税務申告や節税対策といった税務の専門家としてのキャリアを確立できます。
さらに大手会計事務所では、M&A、組織再編、国際税務といった高度なコンサルティング案件に携わるチャンスがあります。
「監査だけ」「税務だけ」ではなく、知識と経験の幅を広げたい公認会計士におすすめの環境と言えるでしょう。
会計・監査+税務という多角的な専門性を身につけることで、独立や企業のCFOといったキャリアアップも目指せます。
まとめ
公認会計士が、会計事務所へ転職するメリットなどについて解説しました。
監査法人から公認会計士が転職する場合、大手会計事務所がおすすめです。
中小会計事務所と比較すると、業務の幅が広く、クライアントの規模も大きいからです。
監査法人での経験を活かしやすいと言えるでしょう。
会計事務所で税務業務を担当することで、独立開業後の業務にも活かすことができます。
将来、独立開業を考えている方や、監査法人での経験を活かして転職したい方は、会計事務所への転職も検討してみてはいかがでしょうか。
Profile レックスアドバイザーズ
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