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建設業経理士という資格は、あまり馴染みがないかもしれません。
しかし、建設業においてニーズが高く、有力な資格です。
今回は、建設業経理士とはどのような職業なのか、資格の概要や難易度について解説します。
建設業経理士とは?
建設業経理士とは、建設業特有の経理に関する知識やスキルをもつことを証明する資格です。
『一般財団法人建設業振興基金』が実施する「建設業経理検定試験」に合格することで資格を取得できます。
試験では会計処理や経理関連に関する知識のうち、建設業ならではの内容が中心に出題されます。
建設業経理士について
建設業経理士は、建設業特有の専門的な経理処理が行える資格を有した人を言います。
建設業は一般の商品売買とは異なる性質を有しているので、特殊な会計処理が求められることも少なくありません。
長期に及ぶ工事において、どのように損益を認識していくのかなどを、押さえていく必要があります。
なお、建設業経理士は国家資格ではなく、建設業界の経理業務に必須な資格でもありません。
しかし前述のように建設業は特殊な会計処理が求められるため、経理担当者には建設業特有の経理に関する知識が必要です。
建設業界の経理担当者や建設業界への転職を目指す人にとって、建設業経理士の資格取得に向けた勉強は非常に有益なものといえるでしょう。
建設業経理士試験の種類
建設業経理士試験は1級から4級までありますが、1級・2級の試験は「建設業経理士検定試験」、3級・4級の試験は「建設業経理事務士検定試験」と名称が異なります。
級別 |
試験の名称 |
特徴 |
1級・2級 |
建設業経理士検定試験 |
|
3級・4級 |
建設業経理事務士検定試験 |
|
通称ではいずれも建設業経理士試験と呼ばれますが、建設業経理士検定試験と建設業経理事務士検定試験は性格が大きく異なる試験です。
なお、公式サイトでは「建設業経理士試験」ではなく、「建設業経理検定試験」という呼び方が使われています。
各級別の試験内容
建設業経理士試験(建設業経理検定試験)の各級の出題内容は以下の通りです。
級別 |
出題内容 |
1級 |
|
2級 |
|
3級 |
|
4級 |
簿記の仕組み |
いずれの級も正答率70%を標準として合格判定が行われます。
なお1級のみ科目ごとに試験が独立しており、有効期限内に3科目すべてに合格することで1級建設業経理士となる仕組みです。
科目合格の有効期限は合格通知書に記載された日から5年間となります。
建設業経理士試験の受験資格
建設業経理検定試験に受験資格の定めはありません。
学歴、年齢、国籍等を問わず誰でも受験できます。
また4級から順番に受ける必要もなく、1級や2級から挑戦することも可能です。
ただし1級と他の級の試験を同日に受けることはできません。
建設業経理士試験のスケジュール
試験は毎年上期と下期の計2回で、上期は1級・2級試験のみ、下期は1〜4級すべての試験が実施されます。
試験日程は年によって異なりますが、参考として令和6年度のスケジュールは以下の通りでした。
【上期】
申込受付期間 |
令和6年5月14日~6月13日 |
試験日 |
令和6年9月8日 |
合格発表日 |
令和6年11月8日 |
参考:建設業経理検定 公式サイト「第35回 建設業経理士検定試験(1・2級)(令和6年度上期試験)」
【下期】
申込受付期間 |
令和6年11月12日~12月12日 |
試験日 |
令和7年3月9日 |
合格発表日 |
令和7年5月9日 |
参考:建設業経理検定 公式サイト「第36回 建設業経理士検定試験(1・2級) 第43回 建設業経理事務士検定試験(3・4級)(令和6年度下期試験)」
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建設業経理士の難易度(合格率)は?
資格試験に挑戦するにあたって大切なのが、試験についての情報収集です。
試験のスケジュールや出題範囲といった概要はもちろん、効率的な対策のためには試験の難易度についても知っておく必要があります。
この章では建設業経理士の難易度について解説します。
各級の建設業経理士試験の難易度
建設業経理検定公式の発表によると、建設業経理検定試験の直近3回分の合格率は以下の通りです。
【1級】
財務諸表 |
財務分析 |
原価計算 |
|
令和6年9月 |
33.5% |
27.1% |
20.1% |
令和6年3月 |
36.8% |
45.8% |
20.1% |
令和5年9月 |
39.4% |
40.0% |
20.0% |
【2級】
試験時期 |
合格率 |
令和6年9月 |
36.5% |
令和6年3月 |
47.7% |
令和5年9月 |
42.2% |
【3級】
試験時期 |
合格率 |
令和6年 |
65.3% |
令和5年 |
66.6% |
令和4年 |
58.3% |
【4級】
試験時期 |
合格率 |
令和6年 |
79.1% |
令和5年 |
75.4% |
令和4年 |
77.8% |
出典:建設業経理検定 公式サイト「建設業経理検定試験 過去の実施状況」
級があがるにつれて合格率が低くなっていますが、特に3級と2級で大きな差があります。
また同じ1級でも原価計算の合格率が特に低いことから、原価計算が特に大きな壁と考えられるでしょう。
建設業経理士試験合格までの勉強期間の目安
建設業経理士の勉強期間は、受験する級や個人の学習ペースによって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
級別 |
勉強期間 |
3級 |
3~5ヵ月 |
2級 |
5~8ヵ月 |
1級 |
6~12ヵ月 |
また、勉強時間の目安として、2級は50~100時間、1級は250~300時間が推奨されることが多いです。
なお、必要な学習時間は簿記の知識や実務経験の有無によって大きく変わるため、初心者の場合は余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
建設業経理士資格のメリットとは?
建設業経理資格を活用するためには、資格によるメリットを正確に把握してメリットを享受できるように行動する必要があります。
- 「経営事項審査」で優遇される
- 建設業界の就職や転職で有利になる
- 昇給、資格手当がつく場合もある
- 建設業界に精通した知識を獲得できる
順を追って解説します。
「経営事項審査」で優遇される
公共工事を受けるにあたっては、「経営事項審査」を受けなければならず、建設業経理士1級と2級は加点対象になる場合が多いです。
公共工事を主として行う大企業では建設業経理士のニーズが高く、資格取得はアピールポイントとして機能します。
建設業界の就職や転職で有利になる
建設業界では、専門的な会計知識を求めている場合が多く、簿記検定だけではなく建設業経理士も評価されます。
建設業界に就職や転職をする際、建設に関する経理の知識を有していると評価され、有利になるでしょう。
専門性の高い知識であり、他者との差別化にも繋がるため、市場価値を高めて就職や転職できる機会に恵まれる可能性があります。
昇格に有利、資格手当がつく場合もある
資格に合格すると客観的に知識を獲得したのがわかるので、社内の方針によっては昇格でも有利になり、資格手当がつく場合も多いです。
建設業経理士は、会社にとっても希少な人材であり、キャリア形成に一役買うので大切な資格と言えます。
年収アップも期待できるでしょう。
建設業界に精通した知識を獲得できる
建設業界に携わって中長期的に働いていきたいと希望しているのであれば、建設業経理士資格の学習を通じて業界に精通した知識を獲得できるので有益です。
建設業の経理知識は、専門性が高く学べる機会も少ないので、学ぶと貴重な人材として活躍していける可能性が高いです。
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建設業経理士資格のデメリット
建設業経理士資格は、メリットも多いですがデメリットも少なからずあるので、注意しなければなりません。
- 評価されない場合もある
- 資格取得にコストがかかる
- 試験の難易度が高い
- 資格を維持するのに手間がかかる
同様に解説します。
評価されない場合もある
建設業経理士は、建設業における経理業務の専門資格であり、業界で評価されるのは間違いありません。
一方で、建設業以外の業界において評価されるかは、建設業における知識を必要としている会社なのか否かに依存します。
評価されない場合があるのも事実であり、建設業経理士の資格で就職や転職が有利になる会社なのかは、事前に獲得しておくのが賢明です。
資格取得にコストがかかる
建設業経理士試験を受験するには、1級は3科目あるため1科目8,120円(税込)かかり、2科目同時受験で11,420円、3科目同時受験で14,720円なので、コストが嵩みます。
専門学校の利用で効率的に学習していくことも可能ですが、100,000円前後(受講科目や通学・通信の選択で変わります)の受講料は決して安くはなく、中長期的に合格を狙う場合には特に経済的な負担も考えていかなければなりません。
試験の難易度が高い
建設業経理士試験の合格率は、2級で30~50%と幅があり、1級の中でも重要な原価計算ともなれば12.0%〜21.0%程度であり、難易度が高いです。
受験を決意して勉強をスタートし、勉強時間を捻出して取り組んだとしても、試験問題によっては実力を発揮できず悔しい結果になってしまう場合もあります。
資格を維持するのに手間がかかる
建設業経理士の資格自体に有効期限はありませんが、「経営事項審査」の加点対象になるためには基準があります。
試験合格後5年間有効という期限が設けられており、5年経過後は「登録経理講習」を受講し、かつ試験に合格しなければならず手間がかかってしまうのです。
建築業経理士と日商簿記の違いとは?
日商簿記2級と似ている部分が多く、「工業簿記」は建設業経理士試験の「原価計算」に、「商業簿記」は建設業経理士試験の「財務諸表」に内容が類似しています。
日商簿記の「工業簿記」も建設業経理士の「原価計算」も、物をつくるのにいくらかかったのかを計算するのには変わりなく、共通点があるのです。
日商簿記は、業界問わず経理として働くのに必須な知識であり、会社におけるニーズは高く就職や転職で有利になる資格として有名と言えます。
建設業経理士の場合には、建設業を主眼においた資格なので、建設業界での評価は日商簿記2級より高い傾向にありますが、他の業界における評価が分かれることもあります。
汎用性の高さは日商簿記に軍配が上がり、専門性の高さは建設業経理士が上なので、優劣はつけられません。
あくまでも活躍していく場の違いであり、建設業は作った製品を売るのではなく、一般的には受注した建物を建設して納品します。
取引形態が特殊で、会計処理や税務も専門的なので、建設業に精通した建設業経理士は特定の分野においてはとても重宝される存在です。
建設業経理士資格を取得する価値がある人とは?
建設業経理士資格は、建設業に特化して経理を行っていきたいと考えている人にとって、取得する価値があります。
建設業界に根付き、専門的な知識を獲得していくことで、キャリアを形成していきたい人には特に向いている資格です。
建設業の経理は、工事ごとに計算を行い原価計算や財務管理、請求業務なども行っていかなければなりません。
特殊な会計処理に対応できる建設業経理士は、建設業界でニーズが高いので就職や転職で有利です。
経理をしている人でなくても、建設業に携わっている人が建設業経理士を取得しておくのは有益と言えます。
日常的に行っている取引が、帳簿にどのように記録されていて、財務諸表にどのように表示されているのか分かるようになります。
財務諸表の数字などを利用すれば、財務分析を行えるようになり、収益性や安全性などの評価も可能です。
また、建設業経理士は専門的な学習も多いですが、一般的な会計処理も学習範囲に含まれているので、日商簿記1級や税理士・公認会計士の学習基礎を獲得することにも繋がっていきます。
建設業経理士資格を取得した場合のキャリアの進め方
建設業経理士資格は、取得すると業務範囲が広がり多様な業務に対応していけるようになります。
中小企業の建設会社に就職して建設業の経理を学び、実務経験を積むことでキャリアアップを目指すことも可能です。
実際に中小企業の建設会社で経理を経験して、大手建設会社に転職できれば建設業経理士で学んだ内容を活用できます。
大手建設会社では、優秀な経理が在籍しているので、転職する場合には即戦力となれるよう、建設業に特化した専門知識や実務経験を身につけていなければなりません。
また、日商簿記とのダブルライセンスとなれば、建設業に限らず多様な業界で経理として活躍していけるようにもなります。
日商簿記1級は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の出題があり、会計の基礎知識を身につけられる資格です。
建設業経理士の専門性と合わせて学習しておけば、対応できる業務範囲が広がりキャリアアップの機会を得られるかもしれません。
日商簿記検定と建設業経理士試験は、学習範囲の似ている部分が沢山あるので、効率的に資格取得を目指せ、有利です。
建設業経理士を活かせる求人と転職のポイント
建設業経理士の資格を活かせる求人は、建設業界における経理が主な転職先となってきます。
公共工事を行う企業では、経営事項審査の加点を考慮して評価が上がる場合もあるので、企業の状況をチェックしておきましょう。
「経営事項審査」の加点対象になるのは、建設業経理士1級と2級であり、建設業経理事務士検定試験3級と4級は対象になりません。
資格取得後5年経過している場合には、「建設業経理士CPD講習」を受けて試験に合格しておかなければならないので注意が必要です。
新年度に合わせて1〜3月は求人が増える傾向にあるので、時期を考慮していき計画的に行動していきましょう。
転職理由は、主観的にならないように注意しながら、今後のキャリアプラン実現のためであるとして客観的な説明をするのが適切です。
また、自分で転職するのが心配な人は転職エージェントを利用しながら、効率的かつ効果的な転職活動にしていくよう心がけましょう。
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まとめ
建設業経理士は建設業の経理に関する知識やスキルを問われる資格です。
建設業界で重宝される資格であり、建設業の経理に転職したい人・スキルアップをしたい人にとって取得する価値が高いでしょう。
転職や昇給・昇格に活かすためには、経営事項審査の加点対象になる2級以上を取得するのが理想です。
建設業経理士試験に合格するには数ヵ月単位の長期にわたる勉強が必要となります。
建設業経理士を目指すのであれば、試験日から逆算して早いうちから勉強のスケジュールを立て始めましょう。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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