税理士業界トピックス

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2015.11.17

課税強化とセット 相続税の調査件数が増えてきた!

課税強化でが然、関心の高い相続ですが、税務調査においても興味深いことが分かってきました。

実は、税務調査件数が増加しているのです。国税庁がまとめた調査事績によれば、平成26事務年度(平成25年7月から同26年6月まで)は1万2406件と、同25事務年度の1万1909件から4.2%増えました。増えたのは、調査件数だけではありません。調査後に申告漏れを指摘した、いわゆる非違件数も、9809件から1万151件と3.5%増加しています。
調査件数に占める非違割合でみてみると、▲0.5%減少しているものの、申告漏れによる課税価格は同25事務年度の3087億円から3296億円に増えました。

追徴税額においても当然増え、本税、加算税合わせて同25事務年度が539億円でしたが、同26事務年度は670億円と24.4%も増加しています。「取り損ねていた税金を、きっちり納めてもらった」(税務調査官)といえば、それだけの話なのですが、調査件数が増えたのには、実はカラクリがあります。それは、平成25事務年度は調査件数を極端に減らしていたのです。税務行政ですから、そのときのトップの方針により、やり方が変わります。税務調査も同様。たまたま25事務年度は少なかったので、平成26事務年度は従来通りの件数に戻っただけなのです。ちなみに同23事務年度をみてみると1万3787件、同24事務年度は1万2210件です。

なぜ調査件数が戻ったのか、まことしやかに囁かれているのが「件数を追わず、税務調査の精度を上げて、申告漏れ課税価格および追徴税額を上げようとしたが、想定外の実績に終わったので従来に戻した」という話。この目標が達成されていれば、税務行政の効率化が図れ、今後も引き継がれていったものと思われますが、国税OB税理士の多くは「ある程度調査件数を追っていかないと、一定の課税漏れを見つけることが難しい。ひいては、本当は納めるべき税金を見逃してしまう結果になる」との指摘も少なくありません。

まっ、納税者側からすると、税務調査は来ないことに越したことはないのですが、相続税の申告は一生に何度もないので、ミスも少なくありません。
意外に知られてないのが、相続税は納税した人の4件に1件、調査が行われている事実です。平成26年分の相続税申告件数がまだまとまっていないので、同25事務年度、同24事務年度でみてみると、まず同25年分の申告で相続税を納めることになった人は5万4421件、このうち実地調査(現地に赴き税務調査が行われること)が行われたのが1万2406件にのぼります。同24年分でみていくと、5万2572件の人が相続税の納税をしており、このうち1万2210件に実地調査が行われました。
相続税を納めた4~5件に1件ペースで税務調査が行われています。そして、実地調査が行われたら、約8割の確率で非違が指摘され、追徴されているのです。平成26事務年度は81.8%、同25事務年度は82.4%の確率です。
1件当たりの課税申告漏れ価格を見ていくと、平成26事務年度は2657万円、追徴税額540万円にのぼります。結構な金額ですよね。

相続税調査の申告漏れで多いのが名義預金。子どもや孫名義の銀行口座に、祖父母がお金を移しておくケースが一般的ですが、調査では贈与税の申告はしていたか、預金通帳はだれが管理していたかなどチェックされます。名義預金については、税理士も存在をしらないことも多く、「出てきたらお手上げ」(都内税理士)と言います。よく、「相続のことは税理士先生に任せているから安心」という納税者がいますが、この数字を目にすると、納税者自身もしっかりと相続について理解しておく必要がありそうです。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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