税理士業界トピックス

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2015.04.14

税務調査官が調査時に作成する文書

国税通則法が改正され、税務調査官が質問応答記録書を作成するシーンが増えてきました。

質問応答記録書については以前、このコラムでも紹介しましたが、調査の立会をする会計人のなかには、まだ課税当局がなぜ質問応答記録書を作成するのか知らずに対応している人もいるようです。課税当局では、調査シーンに合わせていくつかの文書を作成します。

質問応答記録書と聞いて、「確か以前に調査で作成されるケースがあった」という方、それは課税当局が重加算税を視野に調査に来ているかもしれません。
質問応答記録書は、質問検査権等の一環として、調査担当者が納税者に対して質問し、その一問一答を記載していくものです。課税要件の充足性を確保することが目的で、調査シーンにおいて重要と認められる事項について、その事実関係の正確性を証拠として残します。つまり、「課税」が目的ということであり、これを作成しているということは要注意です。

質問応答記録書は行政文書であり、課税庁によると「事案によっては課税処分のみならず、これに関わる不服申し立て等においても証拠資料として用いられる場合があることも踏まえ、第三者(審判官や裁判官)が読んでも分かるように、必要・十分な事項を簡素明瞭に記載する必要がある」そうです。
作成したら、調査対象の納税者に読み聞かせを行い、ページ毎に納税者から押印をもらいます。押印するか、しないかは納税者の自由ですが、押印しなかったとしても、なぜ押印しなかったのかなどの理由を正確に記載し、残します。基本、押印がなかったとしても、課税当局の調査官が作成すれば行政文書ですから、ある程度の重みを持つと思われます。 税理士のなかには、「署名・押印は断ればよい」など指導する方もいらっしゃいますが、課税当局としては、すでにそれも想定済みで、対策を立てています。

さて、質問応答記録書の作成は、手間も時間もかかるので、「ここだ!」というとき以外に作成しないといいます。
とくに、複数名で調査に臨場し、質問応答記録書に署名、押印している場合です。この場合は、ほぼ「重加算税」狙いと考えてよさそうです。なぜ複数人かというと、証拠能力としての重みが違ってくるからです。ここはチェックポイントです。

質問応答記録書と勘違いされるものに「確認書」があります。申述書や上申書ともいうようですが、課税対象者の陳述内容が記載されたものです。確認書は、調査官によってさまざまですが、調査している納税者への尋問を踏まえ、陳述形式で文書を作成していきます。こちらも最終的に納税者から署名・押印を求めます。

確認書は、直接証拠の収集が困難な場合に求められる傾向にあります。「仮装」「隠蔽」の具体的対応を聞き取り、証拠を補強していきます。質問応答記録書より証拠能力は落ちますが、調査官一人で作成できること、ページ毎の署名・押印が必要ないこと、課税当局内での手続きが簡素なことなどから、こちらが調査の現場では作成されることが多いようです。

このほか、査察部署が作成する「てん末書」「供述書」があります。
両方とも、査察がメーンに作成する文書で、てん末書は「犯則事件について公訴が提起された場合の公判における証明の手段とすること」。供述書は、証言・供述、供述録取書など、言葉によって表された内容が証拠となります。供述書・供述録取書は伝聞証拠にあたり原則として証拠能力を持ちません。

通常の税務調査では、「質問応答記録書」「確認書」を理解しておけば十分だと思います。
調査官がどういったことで書面を作成しているのか、場面ごとに理解しながらきっちりと対応したいものです。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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