税理士業界トピックス

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2015.04.22

税務のコーポレートガバナンス 課税当局が重視ってホント!?

税務のコーポレートガバナンス。

ピンとくる人も少なくないと思いますが、今や国税庁が取り組む重要事項のひとつになっています。
平成26年6月25日、国税庁長官は国税局長及び沖縄国税事務所長会議で「平成26事務年度における調査事務の運営にあたりとくに注意すべき事項について」として、税務のコーポレートガバナンスの充実に向けた取り組みを指示しました。それに先立ち、同年5月23日に開催された全国国税局調査査察部長会議でも、税務のコーポレートガバナンスの充実を求めました。
国税局長会議は、課税当局としての運営方針を指示するもので、調査部長会議は、運営面での方向性が示されます。企業に置き換えれば、経営方針及び経営計画が示されたものと捉えてよいでしょう。

なぜ、税務当局が企業にコーポレートガバナンスの充実を求めるのか?
それは、適正納税を実現するために、企業側に意識改革を促しているのです。企業の税金問題を経営課題と捉え、会社全体に浸透させて欲しい。課税当局も調査効率化に繋がります。
アベノミクスの影響もあります。アベノミクスの目玉に、法人税率の引き下げがありますが、「法人税率を引き下げるのだから、企業も適正納税をしてください」というところです。
社長の中には、「うちは税務に関して不正をしていないから大丈夫」と思っている方も少なくありませんが、多くの場合、税務問題は経理の現場だけでなく、営業やサービス提供の現場絡みで起こっています。
 
このほど、大手ゼネコン「竹中工務店」(本社・大阪市)が、大阪国税局の税務調査で所得隠しとの認定を受けましたが、これも経理の問題ではなく、工事というサービスを提供する現場でした。マスコミ報道によると、竹中工務店のケースでは、利益率が高い工事で建設資材をわざと多めに発注し、余った資材は、赤字が見込まれる別の工事に使うなどしていたと言います。本来、余分な資材は経費計上できませんが、それを経費に含めて利益を圧縮していました。これにより、2013年12月期までの4年間で、約1億5千万円の所得隠しが指摘され、他の所得隠し分と合わせて総額約6億円、追徴税額が約5億円にのぼっています。

建設関係では2013年、マンション建設大手の長谷工コーポレーションが東京国税局の税務調査を受け、2012年3月期までの3年間に約25億円の所得隠しを指摘されています。これも工事原価の一部を決算期をまたいで付け替えるなど、利益調整が複数の工事で行われ、仮装隠蔽に当たると判断されました。
建設業者ではありませんが、昨年は帝国ホテルも耐震工事に絡み、東京国税局より所得隠しの指摘を受けました。帝国ホテルの場合、東日本大震災を受け、天井の補強などホテルの耐震工事を実施。工事担当者は、実際は工事が2013年3月末までに終わらず費用も支払っていないのに、工事が終了したとする虚偽の社内報告書を作成、工事費用を13年3月期に計上していた模様です。つまり、工期を偽り、所得を圧縮していたわけです。

こうした現場での税金問題の解消は、常日頃から経営方針として、社内に税務に関する意識を植え付けておくことが重要になります。上場企業の場合では、重加算税が賦課された場合など、担当者だけでなく担当役員、ひいては社長の責任にもなりかねません。ましてや、国税庁が税務のコーポレートガバナンスの充実を呼びかけているなかで、おろそかにしていれば責任はさらに重くなります。

一番ありがちなのが、営業部門の交際費絡みでしょう。なかでも交際費に含まれない「5千円基準」。人数の水増しや、社員だけでの飲み会を付け替えたなど、パターンは決まっています。
また大企業でも、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度においては、交際費のうち飲食費(上限なし)については50%まで、損金算入が可能です。
交際費については、不正処理が行われるのは比較的、運用する営業の現場が多いと言われます。年1回でも模擬調査を実施するなど、企業内部で積極的に税のリスクを排除しておくことをオススメします。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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