税理士業界トピックス

税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します

2012.09.11

“昭和型”事務所モデルの限界
ベテラン職員が改善の足かせ

顧問報酬の低価格化、人件費率のアップ、顧客要求の高度化など、税理士事務所経営は年々厳しさを増しています。

新規事業に活路を見出す方法もありますが、ほとんどの税理士事務所が何度かトライして失敗しています。右肩上がりのバブル経済前であれば、顧問先を増やすことが容易で、スタッフを増やしていけば事務所を大きくできましたが、現在はまるっきり社会状況が異なります。この異なった状況で、かつての“昭和型”事務所経営では息詰まるのも当然です。歴史を見ても、淘汰されていくのは時代の変化を感じ取れず、その時代にあった改善ができなかったケースです。今必要なのは21世紀型の新たな業務形態です。それでは、昭和型の事務所経営では何が問題なのでしょうか・・・。

 税理士事務所を経営していると実感していると思いますが、最近は1件当たりの顧問料報酬が下がっている一方で、要求されるサービス内容は高度になり、専門家責任も非常に高レベルが求められてるーということです。従来型の経営体制では、事務所を維持できない時代が目の前に迫っています。 

 現在、多くの税理士事務所は、1人の担当者が数十社のクライアントを担当しており、その業務もほぼ一人で行っています。この業務形態では、担当件数や1件当たりの報酬が増えない限り、必然的に一人あたりの生産性が下がります。長年勤めれば、昇給もしていくでしょうから、1人当たりの人件費が上がっていきます。1件当たりの顧問料報酬が下がり、人件費がアップ、そして要求される業務内容が高度化・多様化していけば、これまでの業務形態ではムリが来るのも言わずもがなです。

 それでは、どう業務形態を見直したらよいのかー。

まずは、自社を見つめ直すこと。税理士事務所は、サービス業であり、製造業であり、倉庫業であり、運送業の役割を担っています。総務省の事業者区分では、サービス業に位置付けられていますが、決算書や試算表などを作成するという意味では製造業であり、お客さまの申告書データなどを預かる面から見れば倉庫業、お客さまに作成したデータをお届けする角度から見れば運送業です。この比重は事務所によって違うかもしれませんが、私の見る限りでは、製造部分に一番労力をかけているように思われます。そうなると、税理士事務所は製造業?というとらえ方が出来ます。事務所改善のヒントはここらへんにあるような気がします。

スタッフの仕事を大きく分類すると、事務所内部での仕事と社長さんに会って話をする仕事があります。事務所内での仕事は「作業」であり、社長に会って話をするなどの業務は本来の「仕事」です。この「仕事」部分は、世間的にサービス業と言っているところです。作業と仕事のどちらに、どの程度の比重がかかっているのか、もし作業に追われ本来の仕事が2~3割程度ならここを改善する必要があります。作業は、非生産性の業務だからです。

 スタッフが複数人居れば組織です。組織であれば、分業した方が業務効率は上がるはずです。1人のスピードには限界がありますが、分業すれば1人でやるよりスピードアップが図れ、サービス向上につながります。

 分業のお手本と言えば、一般企業の経営体制です。製造部門、物流部門、サービス部門それぞれが機能し、生産性を高めています。 

ただ、そんなことは分かっている先生方も、現実問題として業務形態を見直せないケースがほとんどです。なぜなら、お客さまとの関係、所長自身の問題、ベテラン職員、顧問料制度、資格制度、常識、時間などが阻害要因になっているからです。所長先生自身、危機感を感じていると言っても、基本的にはこれまでの経営手法で何とか事務所が維持されており、スッタフも変化を好みません。切羽詰まった危機感が事務所全体でないわけです。

 業務改善を本気でやるなら、現実的にはかなりハードルが高く、コンサルタントなど外部の力を借りないと上手くいきません。必ずと言っていいほど、スタッフと幹部職員、所長との間に深い溝がでてきます。しかし、将来的に今のような経営をしていては行き詰まり、淘汰されます。将来を見据えて事務所が進化するしかありません。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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