税理士業界トピックス

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2015.09.15

富裕層調査は政治家も対象になるの? 首相・大臣経験者も容赦なし

ここ数年、課税当局は、富裕層の税務調査に力を入れていることをアピールしています。

昔から富裕層調査は行われているので、こうした宣伝をするということは、富裕層に対して適正納税を促すためと考えられます。調査官の年間の仕事量にも限界があるので、こうしたアピールが不可欠になります。

富裕層調査は、平成25事務年度(平成25年7月~同26年6月)で4177件と、前年より57件増加。1件当たりの追徴税額は246万円で、所得税の実地調査(特別・一般)1件当たりの追徴税額145万円の約1.7倍となっています。これだけ見ると、調査の効果はあるようです。
富裕層に対する定義は、「明確な所得金額などの数値はない」(課税当局)と言いますが、来年から提出が義務付けられる「財産債務調書」の適用が、所得2千万円以上でかつ資産3億円以上、有価証券で1億円以上なので、このラインが富裕層と考えてよさそうです。
企業経営者なら、かなりの方が対象になってくると思われますが、素朴な疑問として政治家は税務調査の対象になっているのでしょうか?

政治家は資産公開制度があるので、選挙があった年は、本人の資産総額を公開する必要があります。
ちなみに、2014年末の衆議院選挙に当選した議員の資産ベスト5は、
1、鳩山邦夫(自民/福岡6区) 30億6520万円
2、神山佐市(自民/埼玉7区) 9億6763万円
3、高木宏寿(自民/北海道3区) 6億9856万円
4、麻生太郎(自民/福岡8区) 4億5761万円
5、新藤義孝(自民/埼玉2区) 4億1116万円
となっています。
これだけの資産があれば、やはり富裕層ですよね。

この資産に含まれるものとして預貯金等総額は、定期性の預・貯金、金銭信託と、株券を除く有価証券(国債、地方債、社債など)の合計額です。配偶者や子どもの資産は含まれないので、本当に公表されたのが正確なのかはなんともいえません。公表も選挙の年だけなので、選挙後に資産を移動してもわかりません。

第3次安倍内閣発足時の保有資産によれば、安倍晋三首相は1億528万円で、麻生副総理兼財務相と竹下亘復興相の4億5772万円に次いで1億円超です。
富裕層であれば政治家であっても税務調査の対象になるのでしょうか。それも大臣や首相、首相経験者、派閥のトップなどの有力議員については、一般民衆からすると、「政治家と課税当局はうまくやっているんじゃないの」と、うがった見方も少なくないようです。

国税OB税理士の話では、「政治家といえども納税者なので、税務調査は行われます」とのこと。もちろん首相や大臣も同様のようです。大口案件になると、税務署ではなく国税局の資料調査課(料調)の資産税担当が調査を行うので、税務署とは比較にならないほど厳しい調査となります。ただ、こうした情報は、マスコミ報道でもなければ、われわれが耳にすることはありません。表立って情報が出てくるのは、政治的な意図があるなど、特別なケースが想定されます。元首相の田中角栄氏も調査を受けたこともあるようです。基本的に政治家だからといって、調査官は見逃してはおきません。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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