税理士業界トピックス

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2015.08.11

消費税率10%で注目される金投資

このほど、国税庁から平成26年度の滞納状況が公表され、消費税の新規滞納額が全税目中最も多く3294億円に上り、昨年より480億円増加していることが分かりました。

全体に占める割合は55%超となっています。 滞納が多い消費税ですが、平成27年度税制改正では、2017年4月から消費税率が10%になることが盛り込まれました。2014年に8%となり、5年後には10%ですから、急激な増税ですよね。価格転嫁できればよいのですが、中小企業はそう簡単ではありません。単純に利益率が2%以下なら、消費税増税分で赤字に転落してしまいます。こりゃ、本当に大変な時代が来ます。 一方で投資面から見ると「消費税が動くときに金投資は動く」と言われ、資産家が密かに注目しています。なぜなら、金特有の税金の取り扱いがあるからです。

消費税はこれまで、1989年4月の消費税導入(税率3%)、1997年4月、2014年4月の消費税率引き上げと、3つの大きな変化がありました。 1997年は3%→5%、2014年が5%→8%です。 まっ、金の取引量については、経済状況なども絡んでくるので、必ずしも消費税だけの影響とは言えませんが、金の輸入量は消費税増税前に増えています。

投資用の金は、ほとんどが輸入です。まず、1989年4月の消費税導入直前の取引量を見ていくと、通常月25~30トン程度の輸入量だったものが、2月には39トン、3月には41トンと大幅な増加を記録しています。 1997年4月の消費税率引き上げ直前にも似たような動きがありました。通常時で月6万トン程度だった金の輸入量が1月に12トン、2月14トン、3月16トンへ急増しているのです。

直近の2014年は、有力産金業界団体である WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の発表の「Gold Demand Trends」になりますが、日本の金需要は 4 月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要で、1月から3月までの輸入量が8トン急増。その反動でその後は輸入量が減少傾向に転じています。 消費税が動く前には「金の消費」が急増するー、これは金投資では常識なのです。 こうした消費税率の動きと、金地金の税制との関係ですが、個人の金取引においては、「購入する側が消費税を負担する」ことが前提になっており、金は購入時に消費税を支払い、売却時に消費税を受け取ることができます。一般的に個人においては納税義務が免除され、そのまま受け取れます。つまり、消費税だけを考えるならば、売却時に「消費税アップ分だけ得する」のです。

理屈の上では、利益は得られるので投資としてのうま味があります。ただ、リスクもあり、注意が必要です。国内の金売買は、小売価格と買取価格の間に、スプレッドと呼ばれる価格差があり、このスプレッドがどのくらいになるのか見なくてはなりません。このほか、500グラム以下の取引だとバーチャルチャージという、いわゆる手数料が取られるので、小口での取引には向いていません。
とはいうものの、取引量が多ければメリットも大きいため、世の中の金融商品の中でも、金は「個人が消費税の恩恵を浴することができる数少ない金融商品」と言われています。 たとえば、金価格が1グラム当たり4700円だったとします(手数料は含めない)。金地金商の店頭で、金1キログラム購入すると、金地金代金470万円と8%の消費税37万6千円の合計額507万6千円になります。10%のときは、470万円と消費税47万円の合計額517万円を受け取るので、消費税の引き上げ分の9万4千円の利益が出たことになります。

5%のときに購入していれば(金地金代金は同じと仮定)、消費税分だけでも23万5千円を得ることができます。今回は、2段階で増税が決まっていたので、5%を狙った人も一部いるのではないでしょうか。5%の上げ幅なら販売手数料がかかったとしても、かなり利回りの高い金融商品といえます。 このため、投資面からいえば、消費税率が上がると思ったら、金は買いといわれる所以です。

ところで、金は消費税以外でもいくつかの特色を持っています。 まず、金には保有税がかかりません。また、金を売却し、「売却益(譲渡益)」を得た場合、控除が認められています。給与所得者のような個人であれば、税務上は譲渡所得に分類され、税務上は、他の所得と合わせて総合課税の対象となり、所得期間に応じた控除があります。
購入後5年以内に売却した場合、譲渡所得から特別控除分50万円を控除した金額が短期譲渡所得とされ、課税対象になります。
購入後5年超所有し、その後売却した場合は、譲渡益から控除分50万円を差し引いた金額を長期譲渡所得とし、さらにその半分の金額に税金がかかります。つまり5年超持っていれば、税金が半分になるわけです。その面では、金の保有は5年以上が有利といえるわけです。

金だけでなく、プラチナ、銀も同様の税制が適用されます。2019年も消費税と金地金取引から目が離せません。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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