税理士業界トピックス

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2015.02.24

相続に強い税理士探しでの落とし穴

相続税の増税などの影響から、相続に関心を持つ人が増えました。それに伴い、相続に強い税理士を探す方も少なくありませんが、これがかなり難しい。最近では、インターネットで「相続」「税理士」などのキーワードで検索する方も増えています。また本や雑誌に登場する人ならばと、本屋で探している人もいるようですが、実はネットも書店も落とし穴があるのです。。。

相続に関心が高まったのが、平成27年1月からの相続税の増税です。
昨年までは、相続税の基礎控除額は、「5千万円+1千万円×法定相続人数」だったものが、
1月からは、「3千万円+600万円×法定相続人数」となりました。
たとえば、法定相続人が妻と子ども2人の3人とすれば、従来は8千万円までが基礎控除の範囲でしたが、
同27年1月1日以降は4800万円までとなり、3200万円も差があります。
税率も見直され、同じく1月1日から下記相続税の速算表の2億円超部分が45%に、6億円超部分が55%になりました。

相続税の速算表

相続に強い税理士探しでの落とし穴

そのため、1億円の相続財産があり、子ども2人が相続したとすると、
「1億円―4200万円(基礎控除額)」×1/2=2900万円
となり、2900万円が法定相続分に応ずる取得金額となります。

相続税額は、
2900万円×15%-50万円(控除額)=385万円
法定相続人別の相続税額は385万円になり、
子ども2人なので、「385万円×2人」で770万円が相続税額となります。
妻の場合は、税額が大きく変わってくるのでここでは省きますが、
都心に住宅を所有し、金融資産などを含めると、相続財産1億円を超える人も少なくないと思います。

宣伝のうまい税理士が増加

ところで、この手の話はビジネス誌をはじめ、ネット情報でもかなり入手できますので、
ここでは、相続税に絡んでくる税理士の話をします。

最近、書店には「相続」に関係する書が多数置かれています。
職業柄、すべてに目を通すのですが、パラパラっとめくってみると、知り合いの税理士をはじめ、相続に強い税理士の名前が目に入ってきます。ところが、中には「だれ?」「この先生、相続得意だったっけ?」と思わせる方も出ています。基本的に一般的な会計事務所では、1年に数件相続に絡む仕事が出てくればいいほう。多くの税理士が、あまり経験を積んでいません。
また、「相続に特化した事務所」と宣伝しながらも、内実、相続税の申告メーンという事務所も少なくありません。
どういうことかというと、相続に絡む税理士の業務は、①生前対策、②相続税の申告、③税務調査対応、④二次相続対策、⑤評価などが挙げられます。一般に多くの税理士は、②③をメーンに行っています。
実は、相続で「税金」に絡む部分は一部で、それ以外の方が多いのです。

では、なぜ①④⑤はあまりやらないのか。それは「難しい」「時間がかかる」から。広告で、「相続税の申告件数〇×件」などと記載されていると、「相続の専門」的に見えますが、あくまで「申告」ですから、これだけを見て「相続のプロ税理士」とは言えません。税理士の中には、相続金額が数十億円になってくると、申告ミスをした場合のリスクもあるので、知人の税理士に外注する方もいます。

そんなに経験ない相続税調査

相続税調査の立会も、数多く経験した税理士はあまりいません。
相続税の実地調査件数は、年間1万2千件程度。国税庁の資料によれば、平成24事務年度(7月1日~翌年6月末)で1万2210件、同25事務年度で1万1909件となっています。日本税理士会連合会によれば、税理士登録者は全国で7万5002人(平成26年12月末日現在)ですから、単純計算で一人の税理士が相続税調査の立会ができるのが6~7年に1件となります。
相続人においては、相続税調査なんぞ一生に1回ぐらいしか経験しないでしょうから、税理士も相続の専門家でなければ、アマチュア同士が税務職員に対応する形となるのです。
そのためとは言えませんが、相続税の調査シーンでは申告漏れを指摘されることが多く、
平成24事務年度で81.6%、同25事務年度では82.4%に登ります。
実に実地調査になったら、5件に4件で申告漏れが指摘されているのです。
この申告漏れの中から、税金の重い罰則である重加算税が課せられることも多く、毎年10~11%に登ります。
いや~、この数字を見ただけで、相続に強い税理士が少ないと感じてもらえると思います。

多くの会計事務所が相続ビジネスに注目

現在、記帳代行をはじめとした会計事務所の従来のビジネスモデルは行き詰まり、新たなビジネスフィールドを模索する税理士がほとんどです。その中で、「相続」は課税対象者が増えること、高齢化社会を迎えることなどの理由から、多くの会計事務所が注目しています。会計人向けの勉強会やセミナーも、「相続」絡みの題材は常に人気です。逆を返せば、それだけ「付け焼刃」の知識の方も相続ビジネスに参入しています。雑誌や書籍に登場しているからといって、その道の専門家と信じてしまうのは間違いです。
本物の専門家をどうやって探すか?これはかなり難しいことですが、あまりハズレのないのが、税金の専門雑誌などに登場する執筆者です。専門家向けに解説している人なので、業界では誰もが認める専門家、またはそれなりの有名人がほとんどです。
そんな見方をしながら、相続に強い会計人を見つけてください。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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