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宮口貴志の税界雑感

元『税金専門紙』『税理士業界紙』編集長

Profile

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。
フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

2017年税制改正 金融庁が要望する「積立NISA」とは・・・(2016/11/4)

2017年度税制改正に向けて、NISA(少額投資非課税制度)の第三段、「積立NISA」の創設が検討されています。NISA、ジュニアNISAと着実に普及してきただけに、金融庁としては、手元資金が十分でない若年層の利用促進を目的に、少額からの積立・分散投資を可能にする「積立NISA」を創設したい考えです。

現行NISAは、口座開設数が約1千万口座、買付金額が約7.8兆円となるなど、制度開始以降、着実に普及(平成28年3月末時点)してきました。そのため金融庁では、国民のNISAニーズを継続させていくため、新たに「積立NISA」の創設を予定しています。 その積立NISAは、現行のNISAに似た制度となっていますが、異なるポイントは、長期積立を前提とした非課税口座という点。金融庁の税制改正要望によれば、ポイントは4つあります。

①投資上限額は60万円、非課税期間20年
②長期の積立、分散に適した一定の投資商品(バランス型ファンド、非毎月分配型ファンド等)
③現行NISAとの選択利用
④恒久措置

金融庁としては、積立NISAは現行NISAとの選択利用を考えており、年間投資の上限額を60万円、非課税期間を20年間と設定しています。長期・分散投資のメリットを十分得られるよう、現行NISAよりも年間投資上限額を小さくする一方で、非課税投資期間をより長期に設定しています。

また、現行NISAの投資可能期間は、2023年までとなっていますが、積立NISAは恒久化に加え、非課税期間(5年間)終了時の対応についても考えています。 非課税期間終了時の対応では、例えば、2014年に100万円投資し、2018年に140万円と含み益が出ているケースでは、口座開設者が翌年の投資枠へロールオーバー(移管)を希望した場合、年間投資上限額である120万円を超過したとしても、ロールオーバーを可能とすることを要望しています。

一方で、上記と同様に、2014年に100万円投資し、2018年に70万円と含み損が出ているケースでは、原則、払出し時点の時価である70万円が課税口座に払出しとなりますが、将来、時価が70万円から上がった場合は値上がり分が課税されてしまいます。そこで、払出し価額は、払出し時点の時価70万円ではなく、そもそもの取得価額である100万円とすることを改正で要望としています。

投資対象商品は、現行 NISA では上場株式、公募株式投信、REIT、ETF などですが、積立 NISAでは「長期の積立・分散投資に適した一定の投資商品」としており、現行 NISA の投資対象商品から絞り込みが行われています。積立 NISAでの投資対象商品の具体例として、金融庁は「バランス型ファンド、非毎月分配型ファンド等」を掲げています。このバランス型ファンドは、国内・国外の株式・債券・REIT など複数のアセットクラスにバランスよく投資を行う投資信託です。
複数のアセットクラスへの分散投資を行うため、単一のアセットクラスへ投資する投資信託(例えば、日本株式のみに投資する投資信託)と比べて、相対的にリスクを抑えやすい性質を持っています。この性質から、金融庁はバランス型ファンドを長期の積立・分散投資に適していると判断したものと考えられます。

積立NISAは、現行NISAとの選択利用となるので、 目的に応じてどちらを使うかがポイントになります。まず、現行NISAが予定通り終了したとしても、積立NISAは恒久制度になるため、そのまま使い続けることが出来ます。

「個人型確定拠出年金(個人型DC)との違いがよくわからない」との意見もありますが、個人型DCは60歳まで払い出しできないのに対し、積立NISAは自由に売却、払い出し可能。その点が根本的に違います。
使い分けとしては、積立NISAは60歳までのライフイベント用、個人型DCは60歳以降の老後資産形成というのが良いかもしれません。

金融庁は、積立NISAにおける各年の非課税枠を60 万円、非課税で保有できる期間を20 年間としています。したがって、累計での非課税枠は 60 万円×20 年間=1200 万円です。現行 NISA の非課税枠は2016 年以後120 万円、非課税で保有できる期間が5年間なので、累計での非課税枠は120万円×5 年間=600万円となります。積立 NISAにおける累計での非課税枠は現行 NISA の2倍の水準となっており、金融庁として現行NISAより積立 NISAを選択するインセンティブを設けたものと考えられます。

なお、ジュニア NISA も現行 NISA と同様に、「新規投資が可能な期間」が 2023 年までとなっていますが、今回の金融庁要望にはジュニア NISA の恒久化は含まれていません。金融庁要望により現行 NISA の新規投資が可能な期間の恒久化が実現すれば、現行 NISA の利便性は大きく向上することになります。

現行 NISA は、個人型DCや財形年金・財形住宅など他の運用益非課税の制度と比べると、払出し時期や使途の制限がなく利便性が高くなります。ただ、現行 NISA は新規投資が可能な期間が2023 年までという制約があるので、中長期のライフプランを踏まえて資産運用を計画しようとしたとき、現行 NISA 終了後の運用方法も考えなければならないという点がネックになっていました。今回の税制改正大綱で制度が実現すれば、現行 NISA を生涯のライフプランの中での資産運用の一部に位置付けられ、NISA の利用が一層進むものと考えられます。
どこまで改善され、使い勝手の良い制度になるか、資産運用商品の牽引役として期待されています。


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