税理士業界トピックス

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2013.05.28

「お中元」交際費なら5千円基準使えるの?  交際費にならない裏ワザ

お中元シーズンがやってきました。最近では、上司などにお中元を贈る人も少なくなったようですが、両親や取引先、親しい知人にはお中元を贈る人もまだ多いようです。そもそもお中元は、中国で神を祭る行事(7月15日)と仏教の盂蘭盆会が混ざり、先祖の霊を供養する時期に贈り物をするようになったとのこと。贈り物をするようになったのは江戸時代といわれ、下級武士が上司である組頭に贈り物をする習慣がそのまま現在まで引き継いでいるようです。

 さて、お中元の風物詩にもなっている百貨店の決起大会。三越伊勢丹ホールディングスは5月14日、東京の日本橋三越本店で行いました。三越ではインターネットでお中元の注文を受け付け、5月30日から各店舗で順次受け付けるとのこと。三越以外の百貨店では、高島屋東京店が5月30日に、東武百貨店池袋店では6月1日にそれぞれギフト特設会場を開設します。大丸、松坂屋を展開するJ・フロントリテイリングは被災地である東北のお取り寄せ商品を販売するそうです。

■中小企業の交際費は800万円まで損金OKに

 ところで、会社が取引先などに贈るお歳暮は、どういった経費として処理されるのかご存知ですか。経理畑の人なら知っていると思いますが、一般のビジネスパーソンは意外に知らない人も少なくないようです。

会社で支出するお歳暮にかかる費用は、運送代を含め原則「交際費」として取り扱われます。税務上の交際費は、「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対し、接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」のことで、会社の規模により一定額以上、もしくはすべて損金には算入できません。

具体的に今年4月からは、資本金の額が1億円以下のいわゆる中小企業の場合なら、年間800万円を上限に交際費を損金処理することができます。4月前なら、旧法のより扱いとなり、上限600万円の90%までを損金処理できます。つまり、新事業年度を迎えていない会社は、まだこちらの処理です。

一方で資本金の額が1億円を超える大企業の場合、交際費はすべて損金算入できません。この部分は、中小企業を優遇しています。

 交際費というと、最近は企業規模を問わず「5千円」基準があり、この範囲なら損金処理ができると考えている人も少なくありません。というのも、平成18年度税制改正で、一人当たり5千円以内なら、一定条件をクリアしていれば交際費であっても経費で落とせるためです。取引先との打ち合わせなどで経理から「一人5千円以内でお願いしますね」とクギを刺されるのも、損金処理ができるか否かに関わってくるからです。

確かに、5千円基準をクリアしていれば、大企業であっても交際費を損金処理できます。しかし、これはあくまで「飲食費」に限っています。つまり、お歳暮はあくまで「おくりもの(贈答)」。つまり、飲食ではありませんから、税務上はその金額に関係なく5千円基準の対象外となり、単純に交際費処理をしなければいけないわけです。

■工夫次第で「交際費」→「広告宣伝費」

 では、資本金1億円以上の会社では、お歳暮を交際費以外で処理することはできないものでしょうか?実は、交際費ではなく広告宣伝費として処理する“裏ワザ”があります。裏ワザと言っても、合法的な処理です。

法人税法の特例では、「カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用」は、「交際費等から除かれる費用」とされています。「これらに類する物品」とは、「多数の者に配布することを目的とし主として広告宣伝的効果を意図する物品でその価額が少額であるもの」とされています。そのため、お歳暮として、社名の入ったカレンダーや手帳、タオル、ライターやボールペンなどを取引先などに送っても、「これらにかかる費用については広告宣伝費として差し支えない」(当局)と言います。

ただ、社名入りのボールペンといっても、本体が金でできており、どちらかというとボールペンより金としての価値があるような場合には、「交際費などとして取り扱われるケースもある」(同)ので注意が必要です。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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