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宮口貴志の税界雑感

元『税金専門紙』『税理士業界紙』編集長

Profile

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。
フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

卵子提供で揺れる相続  法律整備が依然進まず

 第三者の卵子提供を仲介するNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD―NET)」(兵庫・神戸市)は5月13日、卵子を提供するボランティアに女性9人を登録し、患者3人に提供することを明らかにしました。早ければ年内に治療が開始されます。

 卵子提供による治療はこれまで、国内では一部医療機関が姉妹や知人から卵子の提供を受けて治療を実施してきましたが、仲介団体による第三者の卵子のあっ旋は初めてです。

  卵子提供は不妊治療の一種で、病気や加齢のため自分の卵子では妊娠できない女性が、夫婦以外の第三者から健康な卵子の提供を受けて、夫の精子と体外受精させて子どもをつくるもの。生まれる子どもは、遺伝的には卵子の提供者とつながりがあります。最近では、自民党の野田聖子議員が海外で第三者の卵子提供を受けて妊娠し、話題になりました。

日本生殖医学会の調査によると、卵子提供はイタリアやオーストリアなどカトリックの国、イスラム諸国の多くでは禁止されていますが、英国やフランスなど欧州の多くの国では無報酬などの条件付きで認めているとのことです。アジアでも韓国や台湾、シンガポールが、条件付きで認めています。

 わが国では、法律に定めがなく、03年に厚生労働省の審議会が匿名の第三者からの無償提供を認める報告書をまとめているだけで、法案提出にまでは至っていません。国会議員の理解も得られておらず、日本産科婦人科学会(日産婦)が国に法整備を求めて活動を展開しています。

 そのため、生まれた子の母親が、提供者か産んだ女性か明確に決まっていないのが現状です。将来的に子が不利益をこうむる可能性も否めません。

  最高裁の判例(平成19.3.23判決)では、卵子提供による出産について「母子関係の成立を認めることはできない」としています。

 また、精子提供、いわゆる凍結精子による出産についても最高裁は、「親子関係を認めるか否か、認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題である(中略)、そのような立法がない以上、死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められない」(平成18.9.4判決)と判示しています。

 精子提供については、国内で人工授精という形で大学病院を中心に治療が行われ、60年以上の歴史があり、1万〜2万人が誕生したと言われています。日産婦は97年、ほかに手段のない夫婦に限って追認しました。

 しかし、上記のような問題について民法をはじめとした法律面での整備は、未だに進んでいません。

凍結精子などによる認知が認められれば、財産相続に関わる分野をはじめとした税務にも大きなインパクトを与えます。認知されると同時に、子どもには父親の財産を相続する権利が発生するからです。

 これまで税法においても、被相続人の死亡後、何年も経ってから法定相続人となる実子が生まれるという想定はしていません。つまり、保存された精子・卵子や死後認知の問題は、相続に関する税務に確実に影響してくるのです。

たとえば、相続税を実質的に軽減する方法として、養子を迎え、法定相続人を増やすケース。税法では、こうした手法への対抗策として、相続人となれる養子の人数を制限していますが、「実子」ならば規制がありません。極端な言い方をすれば、相続人の人数を確保するため、保存しておいた精子を活用する節税手法も出てこないとも限りません。

また、更正請求についても、現在は通常「相続を知った日から5年以内」であれば請求できますが、仮に「相続を知った日」が、生まれた時点であると判断されれば、父親が死んで何年も経って子どもが生まれた場合でも相続税の減額が可能になります。

 日進月歩の医療に対応するためのルール作りが緊急の課題となっていますが、民法や税法においても、これまでの常識では計り知れない事態が起きる可能性も少なくありません。当事者、医療関係者をはじめ、弁護士や税理士などあらゆる分野の専門家が意見を出し合い、いち早く国民が納得するようなルール作りをしてほしいものです。


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