税理士業界トピックス

税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します

2012.12.14

意外に怖い安易な信用保証割引のサポート
“不良会計人”とのレッテルも・・・

 今年4月から、信用保証協会の「中小企業会計割引制度」が一部見直されました。同制度については、ほとんどの会計人の方がご存知だと思いますが、「中小企業の会計に関する指針」に沿って作成される中小企業の計算書類について、会計人(税理士、税理士法人、公認会計士)が同指針に準拠したチェックリストを提出すれば、信用保証協会の保証料率から0.1%割引というものです。同制度は平成18年4月からスタートし、開始当初は、チェックリストの添付だけで認められていました。しかし、同19年4月に第1回目の見直しが行われ、チェックリスト15項目中1項目以上に該当していないとダメとなり、今回の見直しによって全15項目に該当が義務付けられました。さらに、今回は、チェックした会計人に対しても罰則が盛り込まれ、ハードルは一気に高くなりました。

■問答無用の専門家責任

 ところが、この罰則について知っている会計人は意外に少ないようで、旧制度の感覚でクライアントから要望があれば気軽に提出しているケースも多く見受けられます。 この罰則に法的な意味合いはありませんが、会計人の信用失墜という面でのダメージは非常に大きいです。4月以降のチェックリストには、以下のような文面が書かれています。

「本リストの内容に、故意・過失を問わず事実と異なる記載があった場合、私の氏名・税理士登録番号又は税理士法人登録番号(税理士登録をしていない公認会計士の場合は公認会計士登録番号、監査法人の場合は監査法人登録番号)・事務所の名称及び所在地・連絡先電話番号を、「中小企業会計に関する指針」に基づく保証料率割引の適切な運用のため、日本税理士会連合会及びその会員税理士会又は日本公認会計士協会、中小企庁及び社団法人全国信用保証協会連合会並びに貴協会以外の信用保証協会に提供されても異議ありません」。

これって、いかなる理由があっても事実と違えば、中企庁をはじめ会計士、税理士業界及び、全国の信用保証協会で「“ペナルティー会計人”として情報共有します!」という内容で、結果的に金融機関をはじめクライアントにもこの情報が流れる可能性があるということです。保証協会によれば「事実と異なる記載に対する一時利用停止措置」について、「故意・過失を問わず、事実と異なる記載と保証協会が認めるチェックリストが複数回にわたり同一の税理士等から提出された場合、この税理士等が確認したチェックリストについては会計割引制度の利用を1年間認めない」としています。つまり、1社だけの問題ではなく、クライアントすべての問題になるのです。

■これって大企業向けで中小零細に厳しい内容

 15項目のチェックリストの中には、減価償却や貸倒引当金の処理など、中小企業にとっては微妙な判断をしている部分も少なからずあります。退職給付引当金にいたっては、「確定給付型退職共済制度、特定退職金共済制度及び確定拠出型年金制度を採用している場合は、毎期の掛金を費用処理したか」など挙げられています。ほとんどの中小零細企業では、退職給付引当金を計上していないと思いますが、会計指針では計上を求めています。中小零細企業にこの項目は厳しい。 これなら、クライアントからの要望はどうあれ、チェックリスト項目で「NO」なら「NO」と白黒させた方が、会計人としてはリスクから判断したら懸命と言えます。実際に同制度が適用された場合の保証料の割引額はかなり微妙な金額です。クライアントも納得してくれる範囲だと思います。たとえば、当初借入額が1千万円で5年返済だとすると、単純計算で1年目1千万円×0.1%=年1万円、2年目800万円×0.1%=年8千円、3年目600万円×0.1%=年6千円・・・で、5年間で合計3万円程度です。 同制度の適用に当たっては、長年のお付き合いだからと言って従来のように対処していては危険極まりないのです。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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