税理士業界トピックス

税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します

2012.05.15

愛人にも財産を残したい!!

 長いこと会計事務所に勤務していれば、関与先企業の社長さんに特殊関係人、いわゆる愛人が

居るケースも少なくありません。その社長さんの中には、相続対策として愛人にも財産を残した

いと考える人も少なくないようです。 最近、取材で聞いた話では、創業者の会長さんが70歳代

前半ということもあり「そろそろ事業承継と相続対策を真剣に進めたい。それに当たって長年身

の周りの世話をしてくれた女性にも幾らかでもお金を残してあげたい」との相談があったそうで

す。

■高齢でも審査パス「変額個人年金保険」

 親族でもない方にお金を残すのは、相続発生後にもめることが多いため、相談を持ち込まれた

税理士は断りたかったようですが、長年の付き合いもあり、断ることもできずに消極的に引き受

けました。引き受けたはいいが、良いアドバイスが浮かばず悩んでいたときに知ったのが変額個

人年金保険を利用した対策でした。

変額個人年金保険の詳しい話は、ここでは割愛させていただきますが、簡単に言ってしまえば、

保険と投信(投資信託)、年金の働きを合わせ持った商品です。仕組みは毎月一定額ないしは一

時払いで掛金を払込み、一定の据置期間の後、年金等に変わります。据置期間は契約した年齢に

もよりますが最長30年程度となっています。

 この変額個人年金保険のもう一つの価値は、実は相続財産にならないことにあります。そして

この保険は被保険者の健康に不安があろうと、また、かなり高齢であっても保険会社の審査にパ

スできるという特色があります。保険会社にもよりますが、80歳前後でも大丈夫なようです。

「えっ、相続財産にならないの?」と驚かれる方も多いと思いますが、その根拠は、平成16年10

月29日の最高裁判決。同判決では、死亡保険金は民法903条(特別受益者の相続分)に当たらな

いとの判断が示されました。つまり、受取人以外の相続人から遺留分減殺請求を受ける恐れがな

いことを意味します。ただ、気をつけなくてはいけないのが、最高裁は「保険金の額」「この額

の遺産総額に占める割合」「保険受取人である相続人および他の共同相続人(例えば兄弟姉妹)

と被相続人(例えば父親)との関係」「各相続人の生活実態」などを総合勘案して、到底容認で

きないほどの著しい不公平が存在する場合は特別受益に当たるとしている点です。ちなみに、相

続財産に該当するのは、被相続人が生前所有していた「不動産」「動産」「債権」「賃借権」

「損害賠償請求権(慰謝料など)」「金銭債務」「保証債務」が含まれ、生命保険金や身元保証

債務は含まれないとなっています。

■相続人に分からないように残す

そこでこの税理士は、この変額個人年金保険の価値を活かし、60歳後半でもモラルリスク上問題

なく加入できる、受け取る方は「みなし相続財産」として相続税の対象とはなりますが、前述し

た最高裁判決により、死亡保険金は特別受益者の相続分に当たらないことから、スムーズにお金

を残すことができるとして同保険の加入をアドバイスしました。

ここで忘れてはいけないのが、被相続人の死亡によって保険金が支払われるため、保険会社は死

亡確認をすることになります。

親族以外の人が絡むケースでは、ここで親族の方ともめること多いため、たとえば、被相続人の

妻や息子に同じ保険会社の同じ保険に加入しておくこと。こうしておけば親族の方が保険会社に

死亡届を出しますので手続き上で特殊関係人は親族とのトラブルは回避できます。変額個人年金

保険については、相続税法24条の見直し以降、相続対策の一商品として見直されつつあり、活用

方法がいろいろ考えられているようです。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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