税理士業界トピックス

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2015.01.13

美術品を活用した資産移転スキーム!?

美術品を使った資産移転スキームが流行るかもしれません。

そのきっかけが、昨年末(平成26年)の12月25日に見直された、法人税基本通達7-1-1の「書画骨とう等」に定める美術品等に係る改正です。

この改正、すでに企業においては非常に関心が高いです。
法人税基本通達7-1-1では、(1)古美術品、古文書等の歴史的価値がある代替性の利かない財産については、減価償却資産に該当しないとしています。また、(2)「美術関係の年鑑等に搭載されている作者の制作に係るもの」も同様に減価償却資産に含めないとされていました。この(2)の「美術関係の年鑑等に搭載されている作者の制作に係るもの」の部分について、今回の通達見直しで、減価償却資産として取り扱うとしました。

どういうことかというと、従来は取得価額の基準として〝1点20万円未満″かどうかで減価償却資産になるかどうかを判断していましたが、今回はこの基準を1点〝100万円未満″まで引き上げたのです。つまり判定ラインが「20万円未満→100万円未満」に代わったわけです。
さらに、取得価額100万円以上であっても、「時の経過によってその価値が減少することが明らかなもの」であれば、減価償却資産として処理できるようになったのです。
適用は平成27年1月1日以降に開始する事業年度からです。同日以前に入手していた美術品等も同基準に該当すれば減価償却できるとされています。この場合、減価償却は同27年1月1日以降からとなっています。

この通達改正は企業にとっては非常に大きな意味があります。とくに歴史のある企業。業歴の長い会社では、代々会社で引き継がれてきた美術品が少なからずあるものです。税務調査でも美術品については必ずチェックされます。相続においても、この美術品などの確認は厳しいです。
従来は、資産として計上しておくだけでしたが、基準に概要していれば減価償却できるわけです。なんともありがたい話です。

金でできた美術品はどうなるのか、という経営者の声も聞こえてきます。これも今後は、新基準に照らし減価償却できるとのことです。
問題は、その減価償却の耐用年数などの判定です。個々美術品等の状況により考え方が変わってくるため、5年、8年、10年、15年のどれで処理するのか迷いそうです。
さらに、「時の経過によってその価値が減少することが明らかなもの」の判断はどう考えたらよいのでしょうか。課税当局と経営者及び税理士との見解の相違はかなり出てきそうな匂いがプンプンします。

同族オーナー経営者の中には、1円まで償却した美術品を自ら1円で買っていくという方も増えてくるのではないでしょうか。何十点も美術品等があれば、同通達を利用した資産移転スキームも出てくるものと容易に想像が付きます。国税当局はどう判断するのでしょうか?

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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