税理士業界トピックス

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2013.07.09

タックスヘイブン取り締まりで世界がタッグ!?グローバル化の盲点顕在化

国外財産調書制度がいよいよ来年からスタートしますが、海外を使ったタックスプランニングは、一気に包囲網が敷かそうです。

その一つが6月20日に経済協力開発機構(OECD)が打ち出した、OECD加盟国以外の国・地域にも協調を求める動きです。OECDには欧米の先進国を中心に現時点で34カ国が加盟しています。ただ、租税回避が世界各国の税制の抜け穴を利用して行われていることから、加盟国以外との協力が不可欠と判断。租税回避行為は、今や世界的な問題になってきています。

実は、日本はすでに53の租税条約(適用対象国・地域は64か国)(平成24年6月末現在)すべてに、相互協議を設けています。平成23事務年度は143件の相互協議事案が発生し、うち事前確認に係るものは112件と、全体の発生件数の約80%を占めています。租税条約発効では、バハマ国やケイマン諸島、中華人民共和国香港特別行政区、マン島など発行しています。

こうした動きと連動して、国税庁は監視の目を強化。国際部門の人員は、東京国税局だけでも過去十数年で10倍以上に膨れ上がっています。2013年度の査察事案(脱税犯則取締)でも、英領ヴァージン諸島を活用した取引や、中国の取引先に対する水増し請求などが公表されました。

■韓国、中国でも横行するタックスヘイブン

日本だけでなく、海外を使った節税はお隣の韓国でも頭の痛い問題です。主要24企業グループがタックスヘイブンになんと125社も設立し、その資産総額は5兆6903億ウォン(5104億円)に達するそうです。その地域は、英領ケイマン諸島、英領バージン諸島、パナマ、マーシャル諸島、マレーシア・ラブアン島、バミューダ、サモア、モーリシャス、キプロスの9地域となっています。

24グループの法人を地域別にみると、ケイマン諸島が資産総額2兆6490億ウォン(18法人)で最も多く、次いでバージン諸島の1兆6197億ウォン(77法人)が続きます。

中国も租税回避に頭を悩ませていますが、取り締まり強化が実ってきたようです。国家税務総局が公表した租税回避対策を踏まえた2012年の増収額は346億元(約5710億円)となっています。

中国では改革開放直後に租税回避対策がスタート。企業所得税法で移転価格税制や事前確認制度、過少資本税制や外資企業の管理関連の規定を設け、包括的な租税回避防止規定を08年に制定しました。

この結果、第11次5カ年計画(06〜10年)期間中、租税回避対策による個別案件の平均追徴額は383万6200元から1461万5400元に増加。追徴額が1千万元を超えた案件は155件に達し、1億元を超えた案件も12件となりました。

さらに昨年は、国際的二重課税の還付額も64億元まで増えるなど、中国の租税回避関連対策は効果を上げています。

■法律の網にかからないアップル

経済のグローバル化に伴い、極めてグレーな税金対策が横行し始めています。アップルの手法は、どの国からも課税されない仕組みです。米国には「タックスヘイブン対策税制」がありますが、その網からもすり抜ける、通称「チェック・ザ・ボックス規則」を活用しています。結果として、米国からは課税されず、支店を設けた他の国(アイルランド)とは、課税当局との交渉で税率(12.5%)を実質2%以下に抑制。グループ全体の実効税率も約25%に抑えています。

こうした動きは、他の企業でも目立ってきました。グーグルやマイクロソフトなども、利益拡大を求める株主の声を背景に同様の節税策を実施しているとのこと。財政難の主要国は厳しい視線を注ぎますが、法律違反がないだけに対応には手を焼いているようです。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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