税理士業界トピックス

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2015.05.12

当局 税理士を調査、取り締まり厳しく

国税当局の税理士に対する監視の目が厳しくなってきました。

税理士の取締りはここ数年厳しく、税理士法45条「脱税相談等をした場合の懲戒」、同46条「一般の懲戒」、いわゆる税理士法33条2の書面添付に関する虚偽記載などによる処分者が増えています。

税理士登録者は7万4873人(平成27年4月末現在)もいるのだから、多少の〝不良税理士″が取り締まられるのも仕方のないことですが、当局の引き締めは10年前の比ではありません。税理士法をしっかりと理解していないことで、誰もが懲戒処分の地雷を踏んでしまう可能性もあります。

税理士の懲戒処分者は、平成21年度に29件だったものが、同22年37件、同23年34件、同24年41件、同25年50件、そして昨年度が59件と6年で30件も増加しました。
今後、税理士業務の調査件数が増えることがあっても減ることはなく、懲戒処分件数は増えることが予想されます。

税理士自身の脱税は言語道断ですが、クライアントからの要望により、自身でも不安になるような節税コンサルティングを手がけてしまうケースも全くなくはないと思います。また、自身がいくら気をつけていても、スタッフが違反行為を行い、税理士の監督責任が問われる可能性も否めません。税理士法第41条の2には、使用人等に対する監督義務があり、懲戒処分のリスクは、自身の目の届いていないところで不意に降りかかってくる場合もあるのです。

税理士に対する懲戒処分は、税理士法第44条[懲戒の種類]に規定され、財務大臣が行う
(1) 戒告
(2) 1年以内の税理士業務の停止
(3) 税理士業務の禁止
の3種類あります。
このほか、日本税理士会連合会による、登録の取消しもあります。
懲戒処分になると、官報に掲載されるほか、国税庁ホームページにも掲載されます。
「戒告」は業務継続に影響ありませんが、税理士としての信用失墜は否めません。

実は、税理士の不良行為に対する懲戒処分は、平成27年4月1日以降から変わりました。
具体的には、
①税理士業務の停止処分が「最長1年」→「最長2年」に延長
②税理士法第37条の「信用失墜行為」だった「非税理士に対する名義貸しの禁止」が、税理士法第37条の2に明記
③税理士業務の停止処分にも関わらず、無視して税理士業務を行ったとき、税理士業務の禁止になる
④正当な理由なく、税理士会会費を長期滞納すると戒告処分
処分が厳しくなったほか、その内容が明確化されました。

課税当局は、不良税理士の取締りだけでなく、実態把握にも努めています。
実態把握の調査では、業務上改善すべき点が見つかれば注意喚起を促します。

調査を受けた複数人の税理士によると、質問内容は
・個人の確定申告書の管理
・クライアント件数(法人、個人それぞれの件数)
・税理士事務所の看板を掲げているかどうか
・税理士業務処理簿を作成しているかどうか
・決算書類等の保管状況
・電子申告実施の有無
・紙による申告の場合、署名は税理士自らが行っているかどうか
・顧問先から預かった資料はどのように保管・返却しているか
・顧問先への訪問頻度
・会計業務を外部委託しているかどうか
・登録している税理士事務所以外で業務を行っていないか
・税理士証票の提示を行っているかどうか
・税務代理権限証書を作成しているか
・33条の2の書面添付をしているか
・顧問先との間に業務委託契約書を作成しているかどうか
・顧問料の集金方法及び入金口座の確認
・税理士会の研修参加状況
・パソコンの台数確認
・どこの会計ソフト、税務ソフトを使用しているか
・スタッフの業務内容
などです。

問題がなければ直ぐに調査は終わるようですが、税理士法人でもないのに複数事務所の指摘を受けた場合など、税理士会と協力して改善指導が行われます。

税理士に対する情報は、前述した実態調査をはじめ、税理士事務所の確定申告書及び顧問先の調査対応などから収集され、国税総合管理(KSK)システムで管理されています。つまり、顧問先情報を含め、ほとんどの情報を管理されていると思って間違いありません。

こうした状況下、税理士事務所としては、企業同様にコーポレートガバナンスを顧客、課税当局に明確に示しながら、事務所価値を高め、成長へとつなげていきたいものです。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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